精神保健福祉士法施行規則等の一部を改正する省令(案)のパブリックコメントについて

案件名:精神保健福祉士法施行規則等の一部を改正する省令(案)の御意見募集(パブリックコメント)について

2020年1月17日
団体名 貧困研究会運営委員会
意見提出者 貧困研究会代表 布川日佐史

 

<貧困研究会運営委員会のコメント>
『精神保健福祉士養成課程において、従来の「低所得者に対する支援と生活保護制度」を科目として存続させるか、社会福祉士養成課程の「貧困に対する支援」に準じた科目を加えるかして、貧困と生活保護についてしっかり学んだ精神保健福祉士を養成すべきである。』

<理由>
 これまで社会福祉士と精神保健福祉士の養成課程において共通科目とされてきた「低所得者に対する支援と生活保護制度」が、共通科目ではなくなり、一方の社会福祉士養成課程においては「貧困に対する支援」に科目名称及び内容が変更される。他方、精神保健福祉士養成課程においては科目として引き継がれず、「貧困」と「生活保護」を体系的に扱う独立した科目は存在しなくなる。
精神保健福祉士養成の新カリキュラムでは、貧困は、「教育に含むべき事項」から消えてしまう。貧困は、「社会福祉の原理と政策」、「現代の精神保健の課題と支援」、「ソーシャルワーク演習(専門)」という科目の中で、短時間、部分的に取り上げられるだけになる。生活保護も、「社会保障」、「精神保健福祉の原理」、「精神保健福祉制度論」、「ソーシャルワーク演習(専門)」においてバラバラに、短時間、部分的に取り上げられるだけになる。
これは精神保健福祉士養成課程において、貧困についての学びと、生活保護についての学びを削減することであり、それは社会福祉の課題としての貧困問題を軽視することに外ならない。我々は、当会創設の理念と存在意義に照らし、貧困研究会運営委員会として、省令(案)に反対する。

貧困研究会は、貧困に関する調査・研究を目的とする学会であり、これまで貧困の実態の解明と貧困への対応策の改善・拡充に向け、研究会や研究大会において会員の研究の研鑚に努め、雑誌『貧困研究』を通じて研究成果を公にしてきた。そこから明らかになった現代日本の貧困の現状、生活保護の果たしている役割の大きさからして、精神保健福祉士の養成において、貧困について体系的に時間をかけて深く学ぶことの必要性は増していると考える。
精神保健福祉士を目指す人にとっては、社会に蔓延している強度のストレスや人間関係の破たんが引き起こすメンタルヘルスの不調と貧困は複雑に絡み合っていることの理解が何よりも重要であり、また、精神に障害を抱えた人の病院や施設でのケア、地域生活での生活保障において、生活保護が大きな役割を果たしていることを学ばなければならない。精神に障害を抱えた人の立場に立ち、権利擁護及び主体性を尊重した相談援助により、地域生活支援を行う専門職である精神保健福祉士は、貧困に対するより一層深い認識を持つことが求められており、生活保護に関するより正確な知識を修得し、具体的な支援に結びつけることが求められているのである。
 メンタルヘルスを切り口として支援にあたる精神保健福祉士の養成課程においてこそ、社会福祉士の養成科目「貧困に対する支援」が教育に含むべきとしている諸事項、すなわち、「貧困の概念」、「貧困状態にある人の生活実態とこれを取り巻く社会環境」、「貧困の歴史」、「貧困に対する法制度(生活保護法、生活困窮者自立支援法、低所得者対策、ホームレス対策)」、「貧困に対する支援における関係機関と専門職の役割」、「貧困に対する支援の実際」を、体系的にカリキュラムに取り込むべきである。

以上、省令(案)に反対し、強く再考を求めるところである。

以 上

パブリックコメント(pdf)